お知らせ

がんは、こわい。(3)

年齢のこともそうですけれど、こここ数年、寝ようと床に入ると上腹部が痛いことが、5回か6回ありました。ことによると10回以上あったかもしれません。痛くなるたびに胃がんで亡くなった父親の顔が思い浮かび、その晩は悲壮な気持ちのまま、眠りに落ちました。でも、翌朝になると、痛みがおさまっているので、結局検査を受けるところまでいきません。いきませんが、検査をしなくてはいけないという思いと、検査をして癌だったらどうしようという恐怖の間を、四六時中、心は行ったり来たりしています。精神的には全く不健康な日々で、そのことで新たに癌が発生する恐れがあるのではないかと心配したほどです。

そのような中、今年の春に、いよいよ意を決して、癌の検査を受けようと思い立ちました。しかし、いきなり胃カメラという選択肢は、私にはありませんでした。まず試みたのが、テレビで宣伝をしている「尿1滴でわかるがん検査」です。N-NOSEと言います。なんでも線虫という微生物が尿の臭いを嗅ぎ分けて、癌かどうかを判定するというのです。

本当かどうかわかりませんが、東山紀之さんが真面目な顔で勧めるので(TVの中で)、まずはこれをやってみようと考えたのです。尿の検査ですから簡単なのですが、尿が新鮮な内に検査センターに提出しなければいけません。古い尿だと、線虫もいやがるのでしょうか。都内など、指定の場所であれば、検査センターが尿を回収しにきてくれるのだそうですが、私が住んでいる埼玉県上尾市までは来てくれません。
(それで仕方がないので、私が早朝に採取した尿を、うちの者に新宿のラボまで持って行ってもらいました。)

しばらくして、丁寧な結果説明が届きました。結果は「異常なし」でした。ただ、その説明には当然のことながら、「この結果が100%正しいわけではありません」と書かれています。私も患者さんに似たようなことは言いますので、人のことを言えた義理ではありませんが、やはりそう言われれば心配なことは心配です。

それで何週間かした後に、新たにアミノインデックスという検査を受けることにしました。アミノ酸の総本舗とも言うべき味の素株式会社が提供する検査で、血液中のアミノ酸濃度バランスから、癌を発見しようという趣向です。線虫よりは頼りがいがあるような気もします。

さて、検査後数週間して、N-NOSE以上に詳細な検査結果が届きました。結果は「癌の可能性は低い」というものでした。まあ、だからどうだというほどのことでもないのですが、少なくとも、今後胃カメラをするに当たり、もはや手遅れというくらいのひどい状態ではなさそうだ、という予測が立ち、検査を受ける上で、私の背中を押すだけの成果はあったのではないかと思います。